拝啓、遠い国で働くあなたへ

 

こんばんは。

家族写真家の佐々木宏和です。

 

仕上げ作業がたまり、遅くなってしまいます。

時計を見るともう4時26分。

寝ようかどうしようか、ちょっと迷っています。

仕事部屋はいつものように石油ストーブが暖かいです。

BGMのビルエバンスのピアノの向こうで、宿題がたまった次男の物音が聞こえます。笑

__________

 

 

拝啓、遠い国で働くあなたへ

お元気ですか?

イスタンブールでの暮らしはどうですか?

お姉ちゃんの受験を控え、みんなは一足先に帰国してしまったから、さすがのあなたも少し寂しがってるのかもしれませんね。

 

ある年、長崎から来たあなたは豊橋で素敵な人と出会い、アトリエに来てくれましたね。

とても仲が良くて、撮りやすいカップルでしたよ。

2、3年ほど二人だけの撮影が続き、あなたたちはアメリカへ引っ越してしまいましたね。

でも数年後、女の子を授かり3人でまた来てくれました。

女の子はまだ小さく、人見知りで、初めての場所に緊張してるようでしたが、あの時は懐かしくて嬉しくて、僕の記憶に残る撮影でした。

 

その後も仕事で海外を行ったり来たりしてたあなた。

でも、そんな生活の中、あなたたちは4人家族になりとても幸せそうでした。

だけど一人頑張るママは大変そうでしたよ。笑

 

僕の仕事はこんな感じだから、あなたのように子供達と久しぶりに会うということがありません。

ひさしぶに家族に会うというのはどんな気持ちですか?

子供達の成長はとても早いから、帰国するたびに驚きの連続だったかもしれませんね。

 

僕は撮影の時の子供達がいつも素直で感心します。

あなたや奥さんとの会話も豊富で、そんな様子からあなたたちの愛情の大きさをいつも感じています。

 

ある年、家族でイスタンブールに引っ越すと聞いた時は驚きました。

心配そうな奥さんとは対照的に、あなたは普通のことのように話していたのが印象的でした。

子供達もたくさんの友達がいたのに、家族で行くことにしたのはとても悩んだかもしれませんが、僕はとてもあなた達らしく感じました。

 

その後、一時帰国の度に家族揃って来てくれましたね。

でも去年、お姉ちゃんが受験を控える年になって、あなたと家族は離れ離れになってしまいましたね。

家族写真をどうしようって時に、奥さんからこのリクエストをもらったんです。

 

モニター越しで話すあなた達は今までと変わらぬ様子で、見ていないとあなたがその場にいるような感じでした。

でも賑やかなこちらと比べ、モニターの向こうのあなたは広い部屋に一人で座っていて、少し寂しい気もしました。

あなたの笑顔はいつもと変わらなかったけど、他に誰もいない部屋の広がりが対照的で、僕も同じ父親として「一人で頑張ってるんだなあ」って感傷的になってしまいました。

 

撮影は何か不思議なものでしたね。

僕の撮るタイミングがわからないあなたに、いつ撮られてもいいようにずっと笑っているようにお願いしたけど、さすがでしたよ。笑

あなたの表情はとても良かったです。

 

今のあなたと家族をつなぐビデオチャットが、素敵な「家族のかたち」を作ってくれました。

子供達にも、「こんな時もあったんだ」と思ってもらえるといいですね。

 

僕にとっても初めての試みで、楽しい撮影になりました。

賑やかな「こちら」の中央に、一人のあなたがポツンといるのが僕は気に入っています。

遠い国で働くあなたの頑張りが写っていると思いませんか?

そして、それをなんでもないことのように思わせるあなたの笑顔が良かったです。

 

敬具

 

___家族写真家 佐々木宏和

 

2月4日アトリエささきで小さなイベントやります。

 

 

 

 

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