こんばんは。
家族写真家の佐々木宏和です。
人生を一本の「線」とするなら、通常の僕の仕事はその人生の「点」を記録するものです。
でもその「点」がいくつも積み重なり、一度に見返した時には一本の「線」を記録してきたように感じるのです。
そのことがこの仕事のやりがいであり、家族写真家の醍醐味なのです。
そんなことを一人の少年のアルバムから感じて嬉しくなりました。
拝啓、14歳の君へ
お元気ですか?
先日、2016年の君の写真をアルバムに収めたんだ。
君のアルバムは随分と貫禄が出てきて、厚く重くなったね。
僕はいつも写真を収めるたびにアルバムを見返すんだ。
君はいつの写真から覚えていますか?
君の変化に、自然と笑みが出てしまったよ。
生後1ヶ月、君は初めてアトリエに来てくれたね。
生まれたばかりの君は、まるで命そのもので、まだお腹にいるとでも思っているかのように眠り続けていたね。
そこから君との撮影が始まったんだ。
君は独特で、自分の世界を持った楽しい男の子だったよ。
そして時折見せるキラッとした表情が魅力的で、僕はいつもそれを狙っていたんだ。
毎年撮影してると、君は「こんな感じでいい?」なんて聞いてきて、もうすでに僕のイメージを理解してるようだったよ。
そんな友達のような君とのやりとりがいつも楽しみだったんだ。
小学生になり、阪神ファンの君との撮影はますます面白くなっていったね。
僕からのリクエストもだんだん遠慮がなくなり、君も困ったかもしれないけど、照れ臭そうにリクエストに応える君にも、キラッとした瞬間があったんだよ。
中学生になり、ニキビもできてきた君。
塾や部活でなかなか甲子園に行けないって言ってたけど、頑張っていますか?
次は3年生だけど、お父さんも寂しがるから開幕戦ぐらいは応援に行けるといいね。
もう一度、14年間のアルバムを見てみたよ。
そうしたら僕の仕事がまた好きになった。笑
うまく言えないけど、こういうことなんだ。
アルバムの中の君の写真は一年に一枚だけど、それが君の人生の線に見えてきたんだ。
そうしたらアルバムには写真だけじゃなくて、君を育ててきた両親のその時々の思いや、君が成長するたびに感じてきたことなんかも入っているんじゃないかなあって思ったんだ。
一枚づつの写真が「点」になって、その時の思いが「線」を作っている感じがしたんだ。
そして、君の人生に関わらせてもらってるって思えたんだよ。
君はまだ何も感じないかもしれないけど、いつかアルバムを見て、懐かしさと一緒に家族の安らぎや、君の心の中のことや、両親の愛情を感じてもらえたら嬉しいなあ。
20歳まで、後6年。
そこまで「線」が伸びていくように一緒にアルバムを作っていこうね。
それはきっとかけがえのないものになると思うから。
君のおかげでまた1つ、僕の仕事の意味がわかりました。
どうもありがとう。
敬具
___家族写真家 佐々木宏和