切れない凧糸

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僕は大学生から修行時代まで、実家から離れ10年ほど一人暮らしをしていた。

両親からしてみれば糸の切れた凧のように遊びや仕事で忙しく、実家にはほとんど帰ることがない時期でした。

 

兄弟がちょうどそんな時期を迎えているこちらの家族。

二人が小さな頃から、毎年撮影に来てくれます。

兄は社会人、弟は大学生になり、それぞれ一人暮らしをしている。

だけどこの兄弟は、家族写真の撮影のために毎年帰って来てくれるのです。

 

それぞれの生活は忙しいから、「予定を入れるから撮影の日を早く決めて」と兄弟の方から言ってくるらしい。

毎年撮ってきたから、家族の恒例行事として習慣になっているみたい。

友達に家族写真を撮るから実家に帰るって言うとびっくりされるらしい。

僕の妻は「そんなこという人って女の子が聞いたらポイント高いね」って言っていた。

・・・なるほど。

 

この家族にとって家族写真は、バラバラに暮らす家族を集めるための「磁石」?

それとも家族写真と兄弟は切れない「凧糸」でしっかり結ばれているのかもしれない。

あるいは、実家から離れて暮らす兄弟にとって、毎年積み重ねた家族写真は心の拠り所になっているのかもしれません。

 

今年の撮影の後、お兄ちゃんが「家族写真っていいもんだなあって、この歳になって思うようになりました」って言ってくれました。

 

(そうか、やっとわかってくれたか)笑。

とにかく僕にとって嬉しい言葉でした。

 

今年の撮影は、いつも写真が苦手なお母さんを中心にして撮影しました。

久しぶに会う息子たちに両脇から何か言ってもらい、とにかくお母さんを照れさせてみようと思いました。

そうすることで両親の支えと、兄弟の成長が撮れるだろうと思ったのです。

写真的な笑いではないけど、肩が上がり目をつぶってしまった笑いが、いかにも照れ臭い感じで、僕のイメージにぴったりでした。

そして、今のこの家族らしさが写ってるなあって思ったのです。

 

今年の撮影は終わりました。

また一枚、家族写真を重ねた二人は慌ただしくそれぞれの生活に戻って行きました。

 

家族写真家 佐々木宏和