僕にはリンタとハルカという二人の息子がいる。
リンタは高校一年で、ハルカは中学一年だ。
親子なので当然僕に似てるところもあれば妻に似てるところもあるのだが
少し不思議に思うこともある。
妻がよくこんなことを言う。
「リンタと足音がそっくりね」
「ハルカと同じ格好で寝てたよ」
でもこんなことは自分で見たり聞いたりできなくて、
妻に言われて、そうなんだあって思うだけだ。
だとしたら、
やっぱり親子は何か見えないもので繋がってるんだと思えてくる。
雨の日が続いた初秋、久しぶりの晴れ。
この日は海で4人家族の撮影だった。
少し肌寒くなったけど波は穏やかで、撮影日和。
気持ちのいい風を浴びて、家族も楽しそうに遊んでいる。
しばらくして砂遊びをしてた父子が波打ち際に向かった。
その様子を400㎜の望遠レンズ越しに眺めていた僕は
思わず笑ってしまった。
隣あわせでもなく、なんとなくの距離で背中を向けあい、
同じようにお尻を突き出して手を洗い始めたのだ。
大小の違いはあるけど父子のそっくりな姿がおかしくて。
でもとても自然でいい感じだったので、
僕はこの光景が壊れないように、遠くからそっとシャッターを切った。
この父親は息子と同じ格好で手を洗ってるなんて気づいてないだろうなあ。
どこの家族にも自分では気づかないけど、似てしまうことがあるんだなあっと、
僕と息子たちの「足音」や「寝ぞう」のことを思い出した。
なんかこんなふうに息子たちと知らず知らず似てしまう写真を
僕も欲しいなあなんて思う。
見えない繋がりが写った、父子の絆の証明写真。
そんなものが家族写真のような気がします。
家族写真家 佐々木宏和