恋人の日

 

僕はテスト週間の次男を、

早朝の塾へ送るために5時に家を出た。

 

妻は東京で講座をするために、

長男と6時半に家を出るらしい。

 

別々に過ごす、6月12日。

世間では、「恋人の日」というらしい。

 

僕たちにとっては、

22回目の結婚記念日だ。

 

昨日、妻が寝静まってから

こっそり探した写真。

 

22年間の出来事を知らず、

恋人だった頃の妻は穏やかに微笑む。

 

もし、22年間の出来事を知っていたら、

この微笑みはどうなるだろう?

 

そんなありえないことを考えながら過ごす、

今年の6月12日。

 

 

帰って来た次男が

いつものようにカバンを放り投げた。

 

「ママおらんの?」

「この体操服ちゃんと洗った?」

「なんか臭いんだけど」

テストできたか?

「まあまあ」

・・・・・

 

 

もし恋人の彼女がこの光景を見たら、

きっと微笑むに違いないだろう。

 

 

 

_____佐々木宏和

 

 

 

 

 

 

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